結ばれないはずが、一途な彼に愛を貫かれました ～裏切りと再会のシークレット・ベビー・ラブ～

「あ、うん。で、でも！　ここではそうじゃないっていうか……」

　ソフィアは自分が男爵令嬢であることを告げることができなかった。いくら時代が変わりつつあるといっても、海辺で絵を描くような貴族の男性はいない。

アルベルトに自分が貴族だと教えて距離をとられたくなくて、ソフィアは話題を変えるように問いかけた。

「アルベルトさんは、いつもここで描いているの？」
「え、僕？　うん、最近はこの木の下が気に入っているんだ。海も綺麗に見えるし、思ったより人通りも少ないから、絵を描くのに集中できるしね」
「そうなんだ」

　それなら、またここに来れば会えるのかもしれない。もっと話したいし、また会いたい。ソフィアは顔をぐっとあげた。

「また、ここに来てもいい？」
「もちろん、僕はしばらくここで絵を描くつもりだから、いつでも来て」
「うん、また来るね」

　残念だけれど、今日はもう時間がない。この後エルーサと話をする予定だから、とその場を離れて歩き始めたソフィアは、名残惜しくて振り返ってしまう。

　すると、アルベルトはソフィアの後ろ姿をずっと見ていたのか、すぐに視線が絡んだ。