結ばれないはずが、一途な彼に愛を貫かれました ~裏切りと再会のシークレット・ベビー・ラブ~
「うっ、ううっ、……あああ!」

 ソフィアは今だけは一人で泣いて、全てを忘れたかった。アルベルトによって傷つけられたこころの傷が、また広がっていくのを止めたかった。

 木陰にうずくまったソフィアの頬を撫でるのは、温かい海風だけだった。





 ひとしきり泣いてスッキリとしたソフィアは、自分の考えが狭くなっていることに気がついた。リヒトを連れてセイリュースを出るなんて現実的ではない。アルベルトの事情も聞かずに飛び出してきてしまったから、次に会った時はもう少し冷静に話をしてみよう。

 リヒトのことを教えるのはまだ少し勇気がいるけれど——、アルベルトに秘密にしておくのも心苦しくなる。

 彼は忘れてしまったソフィアのことを一途に想い、思い出そうとして苦しんでいる。その一方で、やはりローズのことが気にかかる。彼は、あの時のアルベルトは愛しそうにローズを見つめていたのに。何があったのだろうか。

 下を向いて考え込んいると自分が暗くなってしまいそうで、ソフィアはぐっと上に顔を向けた。

「よしっ、元気出そっ!」

 両手でパンッと頬を叩いて立ち上がると、ソフィアは雑貨店に向かった。いくらエルーサが許してくれていても、何もしないよりは掃除くらいはしておこう。幸い今日は酒場が休みなので、リヒトと夜までゆっくりと過ごすことができる日だ。

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