結ばれないはずが、一途な彼に愛を貫かれました ~裏切りと再会のシークレット・ベビー・ラブ~
 六年前のアルベルトも、同じことを言っていた。だから、最後の最後までお金に換えることを躊躇していた。でもリヒトの命と比べることなどできなかった。その指輪を、今またアルベルトが手にしている。

「あぁ、僕は……、ソフィア、君にこの指輪を渡していた。僕の生涯の伴侶だと思って、君にプロポーズをした」
「アルベルト、何か思い出したの?」

 夕焼けを受けて、アルベルトの顔が赤く染まる。長く伸びる二人の影が、重なり合って海岸線に届こうとしていた。

「全部ではないけれど……、ソフィア。僕が探していたのは、君だということはこの指輪を見て思い出したよ」
「アルベルト!」

 一歩一歩、ゆっくりとアルベルトはソフィアに近寄り、吐息がかかるほどの距離まで近づいた。

「ソフィア、ごめん。僕は君になんてひどいことを……」
「そんな、……どこまで思い出したの?」
「君が、僕にとって大切な人だということと、君にプロポーズをしたこと」
「アルベルト」

 潤んだ瞳で見つめながら、アルベルトは絞るように声を出した。

「今度こそ、やり直しのキスがしたい。頼む、もう少しで全て思い出せそうなんだ。……ソフィア、断らないでくれ」

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