結ばれないはずが、一途な彼に愛を貫かれました ~裏切りと再会のシークレット・ベビー・ラブ~
 そう言われてしまうと、ソフィアは拒否することはできなかった。アルベルトは記憶を取り戻したばかりで、きっと答え合わせのように確認したいこともあるだろう。

 道に止めてあった馬車に乗り込むと、アルベルトはリヒトを膝の上に寝かせながらも大切なもののように抱いている。リヒトも安心しきっているのか、寝息をたてていた。

「かわいいな、リヒト君は」
「うん。産まれた時からすごく可愛かったのよ」
「そうか……、こんなに大きくなるまで一人で育てるなんて、ソフィアは凄いな」
「……」

 ソフィアは応えることばを見つけることができずにいた。彼に労わりの言葉を貰っても、アルベルトが父親だという実感がまだない。アルベルトはリヒトの頬を撫でながら、歯をぐっと食いしばった。

「すまなかった、ソフィア。こんなに大きくなるまで、一人で育てるのは大変だったろう」
「……っ、アルベルト、お願いだから私からリヒトを奪わないで。リヒトは私の光なの」

 一番、彼に言いたい言葉を口にしてしまう。このまま、アルベルトにリヒトを引き取ると言われてしまうと、何の力もないソフィアにはどうすることもできない。

 だが、ソフィアの言葉を聞いたアルベルトは、眉をひそめてソフィアを見つめた。

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