結ばれないはずが、一途な彼に愛を貫かれました ~裏切りと再会のシークレット・ベビー・ラブ~
「どうして僕が君からリヒト君を引き離すなんて……、ソフィア、僕は立派な母親から子どもを奪うような趣味はないよ。君が虐待をしているなら別だけど、君はみたところとてもいいお母さんをしているじゃないか」
「本当に? リヒトを連れて行かないでくれる?」
「もちろんだ。君と一緒でなければ、連れていくなんてことはない」
「よかった、それだけが心配で、私」

 ソフィアはこころの底から安堵するように息を吐いた。一番の気がかりでもあったから、そうではないと知ることができて良かった。アルベルトがリヒトに会ったら、連れていかれるかもしれない。それが一番の恐怖だった。

 どうやら、アルベルトの中にはその考えがないようでホッとする。アルベルトにはまだ聞きたいことはたくさんあるけれど、気持ちを整理するためにソフィアは小さな車窓から外を眺めた。宵闇を照らす細い月が登ろうとしていた。





 坂を駆け上がっていく馬車に揺られると、すぐにホテルの入り口に停まる。アルベルトはリヒトを抱えながら降りると御者に何かを命じ、すぐに部屋の方へスタスタと入っていく。

 リヒトを部屋のベッドの上に寝かせると、普段より柔らかい布団の感触にリヒトも一瞬目を開けたが、ソフィアが見つめながら背を撫でるとまた眠ってしまう。体温も上がっているから、もしかしたらこのまま朝まで寝てしまうかもしれない。

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