結ばれないはずが、一途な彼に愛を貫かれました ~裏切りと再会のシークレット・ベビー・ラブ~
 エルーサも会社が大きくなり、王都に出てくることが増えて来た。王都に来るといつもヘザー侯爵家を訪ねてくれる。リヒトも今では家庭教師から学ぶことが楽しいようで、ソフィアにまとわりつくことも少なくなってきた。

「リヒト君も六歳か。大きくなったわね」
「そうね、身長も一気に大きくなってきたのよ。ミレーがもう抱っこできないって、悲鳴を上げていたわ」
「まぁ、それはパパの役割でしょ。ね、アルベルトさん」
「なに? 僕のこと?」

 急に話を振られたアルベルトが、キャンバスの向こう側から顔を出した。ようやく落ち着きを取り戻したアルベルトは、妊娠しているソフィアの姿を描きたいと言って絵筆を再び持ち始めた。以前は休みをとらずに働いていたが、今は仕事をなるべく人に任せ、ソフィアとリヒトと時間を過ごすようにしている。

 座っているだけでは暇だからと、ソフィアは生まれてくる赤ちゃんのための服を編んでいた。

 この絵が完成したら新しく整える子ども部屋に飾ろうか、夫婦の寝室に飾ろうか、まだ決めていない。

 でも、どこに飾っても——。

 膨らんでいるお腹を撫でながらソフィアはアルベルトを見つめると、深海のように紺碧な瞳の目尻が少し下がる。ソフィアの幸せな姿の絵はこれからもきっと増えていくだろう。

 開け放した窓からは、優しい風が吹き込んできた。



【おわり】

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