結ばれないはずが、一途な彼に愛を貫かれました ~裏切りと再会のシークレット・ベビー・ラブ~
 年ごろの娘であれば着飾って舞踏会に出席することを喜ぶけれど、ソフィアはそれほど興味を持つことができなかった。夢中になれるような男性もいないし、他の貴族令嬢とおしゃべりするのも好きではない。

 むしろ、ドレスについているレース飾りやアクセサリーに目がいってしまう。見事な刺繍のついたヴィンテージ・ショールを手にした時は、こころが震えるほど感動した。

(どちらかっていうと、ずっとレース編みをしていたいのになぁ)

 手先が器用なソフィアは、刺繍などの手芸が好きだった。だが男爵令嬢としては嗜む程度は許されるけれど、作った作品を売るわけにはいかない。身近な人にプレゼントをすれば喜ばれたが、貴族特有のお世辞なのかもしれないため、ソフィアは一度でいいから自分の作品を売ってみたかった。

 その夢は、ここセイリュースで叶えることができている。思い切って雑貨屋の店主に頼んでみたところ、今、ソフィアが編んだクロッシュレースの小物を店の隅で取り扱ってくれるようになった。はじめはコースターや本のしおりなどを置いていたが、昨日からは大判のテーブルクロスを置いてくれた。

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