結ばれないはずが、一途な彼に愛を貫かれました ~裏切りと再会のシークレット・ベビー・ラブ~
「絶対にリヒトのことは隠すわ。とにかく、このことは黙っていて」
「わかったよ。でもソフィア、困ったことになったら何でも言うんだぞ」
「ジミー、ありがとう」

 ソフィアが顔を上げると、ジミーは頭をくしゃりとかいて目を泳がせた。

「あー、その、なんだ。この件が終わったら、俺のこと……」

 ジミーは何か約束をとりつけるようなことを言い始めたが、ソフィアは壁に備え付けられている時計を見ると、すでに約束した時間を過ぎている。

「じゃ、じゃあ! もうリヒトが待っているから、帰るね!」
「あ、あぁ」

 ジミーの言いたいことを最後まで言わせずに、エプロンを外すとソフィアはレッドソックスの店を出た。明日から付き合わないといけないアルベルトのことで頭がいっぱいになる。下り坂を小走りすると、建物の途切れた向こう側に広大な海が広がっていく。

 光を反射させて輝く海は、いつもと変わらず静かな波が打ち寄せている。アルベルトと出会った時も、こんな日だったと昔を思い起こすが、同時に苦い思い出までもが押し寄せて来た。

(どうして今さら、私の前に現れるの?)

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