結ばれないはずが、一途な彼に愛を貫かれました ~裏切りと再会のシークレット・ベビー・ラブ~
 怒りにも似た戸惑いの感情に、思わずソフィアは立ち止まった。アルベルトの態度は他人行儀なものだったから、昔を懐かしんで傍に呼ぶわけではないのだろう。何より、彼はローズと結婚して子どももいるはずだ。そんな彼が懐かしいからといって、ソフィアにもう一度構うのだろうか。

(やけに他人行儀だったのも、意味があるのかな)

 わからない、けれど一つだけわかっていることは彼は大貴族で、なおかつ大会社の社長でもある。そんな人にリヒトの存在が見つかれば、どうなるのか予想がつかない。

(リヒトのことは、隠しておかないと)

 今のソフィアにとって、リヒトはなくてはならない存在だ。生きている理由といってもいいくらい、リヒト中心で生きている。

だが、情報が少なすぎてあまり考えても仕方がない。ソフィアは立ち上がり、再び歩き始めた。





 リヒトを迎えに行くと、お昼寝が終わったばかりで目をごしごしと擦っている。レティにお礼を伝えまだ寝ぼけているリヒトを抱っこする。

「あー、もうリヒトはこんなに大きくなっちゃったから、ママはもう抱っこできません!」
「ママ、がんばって」

 リヒトも甘えているのか、ソフィアにしがみついてくる。ギュッと握る小さな手が愛おしい。

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