記憶喪失のお姫様は冒険者になりました
ミホはそう言って宿を飛び出しらしい。
『クロさんは私にとって大切な人…ですから』
なぁ、ミホ。
俺は気づかないうちに同じ人間に2度も……恋に堕ちていたんだ。
俺の初恋は……。
『大丈夫ですか?』
シュティーナ様だった。
そして2度目に恋したのは……。
『クロさん!』
ミホ、お前なんだよ……。
「お前を助けるためとは言え、なんて無茶を……」
『クロさんを助けに行きます』
ミホはいつも真っ直ぐだった。
いつも笑ってくれた。
いつも俺の背中を押して、手助けしてくれていた。
俺はお前に何をあげていた?
俺はお前から貰ってばかりだった……。
『クロさん、ありがとうございます!』
俺は……今、何ができる?
お前のために何ができることはあるのか?
『…クロさん……お気をつけて』
お前の涙はみたくない。
俺はーー。
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