ブルー・ロマン・アイロニー
「なーあまり」
「まだ起きてた」
「お前、なんで寝れなくなったわけ?」
「そんなことない。わたしはちゃんと寝てる」
いやいや、と暗がりから呆れた声が届いた。
「そりゃさすがに無理があんだろ。俺がここに来てもう5ヶ月近くたってる。ポンコツでもねえ限り、気が付かねえわけねーだろ」
「ポンコツじゃん。いつまでたっても自分のことは思い出さないし、わたしの扱い雑だし、たまに命令無視するし」
「前にも思ったがお前、命令がぜんっぜん命令じゃないんだよ」
「はあ?どういうこと?」
「そんくらい自分で考えろポンコツ!」
「はあ~~?なんっ……はあ~~~~??」
「おっ図星で言葉も出ねえか?おら、なんか言い返してみろよ」
「ッ……!……!!」
もう夜も更けているのに、わたしたちはいつものように言い合いを始めてしまった。
隣の部屋から壁ドンされるまでそれは白熱してしまい、アドレナリンが出たのかわたしはよけいに眠くなくなっていた。最悪すぎる。
「アドレナリンもアンドロイドも大嫌い」
「俺を人間の分泌ホルモンと同列するな」
「アンドロイドもアドレナリンも大嫌い」
「前にしたらいいってわけじゃねえから」
もう無視だ、無視。
目を閉じているだけでも体力は回復するらしい。
だから、眠れなくたっていいんだ。……学校でもちょっと寝るし。
この歳になって睡眠学習がどうこういうのは恥ずかしい気がしなくもない。
だけどしょうがないんだから、と自分に言い聞かせる。
わたしがようやくうとうとできたのは、いつものように外が淡く白み始めた頃で。
朝になって時間通りに起こしてきたノアは、寝不足でぶすっとしているのであろうわたしの顔を見て、なにか言いたげに肩をすくめたのだった。