姉に婚約者を寝取られたので訳あり令息と結婚して辺境へと向かいます~苦労の先に待っていたのは、まさかの溺愛と幸せでした~
ふと、視界が真っ暗になる。
そんな時、手を引かれて温かさに包まれる。
「………黙れ」
「!!」
「え……?」
「聞こえなかったか?黙れと言ったんだ」
ゼルナに抱きしめられているのだと気付いて、喜びと安心感に詰まっていた息を吐き出した。
「愛想がない?有り得ないな。それにウェンディは詰まらない女ではない……今すぐ撤回しろ。ジャネット・デイナント」
「え…………?」
「でなければデイナント子爵に抗議する。ウェンディを…… 愛する妻を侮辱する行為を、僕は絶対に許さない」
「……ッ」
「ジャネット、もうやめろよ!!」
「離してッ!!」
フレデリックはジャネットの腕を掴むが、直ぐに振り払われてしまう。
ゼルナの視線がゆっくりとフレデリックの元へ向く。
「君は……?」
「フレデリック・ニルセーナ、です……ジャネットの婚約者の」
「そうか、君が……」
それを聞いてゼルナの瞳が細まった。
「はい……!先程は申し訳ございませんでした!無礼を、っお許しください」
フレデリックが深々と頭を下げる。
こんなに焦っている彼の姿を初めて見た気がした。
「君は少しはまともなようだね……でも僕は君の謝罪で許す気はないよ。君の婚約者に、僕の妻に対する非礼を詫びて貰うまではね」