姉に婚約者を寝取られたので訳あり令息と結婚して辺境へと向かいます~苦労の先に待っていたのは、まさかの溺愛と幸せでした~
「デイナント子爵夫人……迎えの馬車が来ておりますが」

「え……?」


母は先程来たばかりである。
驚いて確認をするように母の方を見ると、静かに首を横に振る。


「迎えは別に頼んでます。追い返して頂いて結構ですわ」

「かしこまりました」

「お母様……」

「今更わたしに頼ろうとしても、そうはいかないんだから。アルフは信頼している侍女に任せてきたし、今日はウェンディと共に居られる時間を楽しむって決めていたの」


此方を心配させまいと笑う母の顔を見ながら複雑な心境でいた。
そのまま二人で話していると、軽いノックの後にゼルナと共に部屋に入ってきたマルカン辺境伯を見て母は目を見開いた。
そして直様、辺境伯の側にいくと「本当に……本当にありがとうございます!」と涙ながらに頭を下げた。

辺境伯は母の肩に手を置くと「御礼を言いたいのは此方も同じだ。ウェンディのお陰でゼルナは大きく変わる事が出来たのだから」と柔らかく笑った。

そして、四人で夕食を食べながら和やかで温かい時間を過ごしていた。
ゼルナと話す姿を見ては、安堵の言葉と共に涙を流す母の姿を見て胸が締め付けられる思いでいた。

(……今、デイナント子爵家は大変なのに。お母様の為に何が出来るだろう)

こんなにも自分の事を想ってくれていた母には幸せになって欲しいと思わずにはいられなかった。
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