姉に婚約者を寝取られたので訳あり令息と結婚して辺境へと向かいます~苦労の先に待っていたのは、まさかの溺愛と幸せでした~
ゼルナの大きな声を初めて聞いて目を丸くしていた。
"ウェンディさん"という他人行儀な呼び方は気になるところだが、初めて名前を呼ばれた事に喜びを感じていた。


「ゼルナ……お前」

「その手を、離してくれ……っ」

「そうか、そうか……!そんなにウェンディを愛していたなんて気付かずに済まなかった」

「……!!」

「なっ……」

「ハハッ、新婚の時はそんなもんだ!ブル、お前また大きくなったか?」

「ワンッ!」


元気よく吠えたブルの頭を撫でた辺境伯は、同じようにゼルナの頭もわしゃわしゃと撫でている。
チラリとゼルナを見ると顔を真っ赤にして顔を背けてしまった。
どうやら思っていた以上に子煩悩な辺境伯とゼルナの関係に微笑ましさを感じながら、二人の会話を聞いていた。


「あぁ、良い匂いだな……」

「もう夕食の準備は出来ておりますよ」

「そうか!折角作ってくれたご馳走が冷めてしまうな。皆で行こうじゃないか!」


マルカン辺境伯はゼルナの首根っこを掴むとズルズルと引き摺っていく。
パタパタと手足を動かしながら必死にもがいているが、まるで意味をなさない。
それにあんなに強いゼルナを赤子のように扱う辺境伯に驚いていた。
< 75 / 215 >

この作品をシェア

pagetop