【完結】この結婚、漫画にしちゃダメですか?
功太が帰った後、私もすぐに居酒屋を出た。夜風が気持ち良いのもあり、ほろ酔い気分に加えて眠気が襲ってくる。
ふと腕時計を見ると針は21時28分を指していた。
──今日は小笠原さんが出張から戻ってくる日……もう帰ってるかな?
小笠原さんの体に触れてからというもの、つい小笠原さんのことを考えてしまう。だってあの時……小笠原さんの体が少し熱いような気がしたから。
本当は功太に同居のことを打ち明けようとしたけど心配をかけたくなくて言い出せなかった。
──小笠原さん。あまり無理してなきゃいいけど。
夜風にあたりながら色々なことを考えていたらいつの間にか家路に着いていて。でも、あれ?鍵が開いている?
“ガチャ”
ドアを開けたその瞬間、私は血の気が引くのがわかった。
真っ暗な部屋に月の光だけが指しているその先に小笠原さんが倒れていたのだ。
「…………え。小笠原さん!?」
私は小笠原さんの元へ駆け寄った。
「小笠原さん!どうしたんですか、大丈夫ですか!?」
──なんでこんな。いつから倒れていたの?……あぁどうして私、もっと早く帰って来なかったんだろう。
私は自責の念に駆られた。
「わるい……水をもらえるかな……」
小笠原さんが絞り出す声でそう言ってきた時、私は急いで額に手を当ててみた。
「熱!小笠原さん、熱すごいじゃないですか?!ちょっと待ってください。今、水を持ってくるのですぐベッドに……」
そう言った途端、小笠原さんが私の手を払って体を起こしフラフラと立ち上がったのだ。
「…………れぽ─と。かかなきゃいけないから」
「何言ってるんですか、こんな時に?!そんな体じゃ無理です。今はとにかく安静にしてください」
そうよ。こんな時にレポートなんて書かなくたっていいじゃない。なんでそんなに仕事ばかり……
「なにかしていないと……」
──え?
突然、小笠原さんが小さな声でゆっくり話し始めた。
「仕事にでも没頭していないと、ずっと自問自答ばかりで答えが出ないんだ……」