【完結】この結婚、漫画にしちゃダメですか?
あぁ……香菜さんのことだ。
今でも小笠原さんの中では香菜さんのことでいっぱいなんだ。
……ん。そっかそっか!当たり前だよね。そんなにすぐ忘れられるわけないじゃない。結婚までしようとしてたんだから。
そんなことわかってる。
わかってるはずなのに……何で私ショックを受けているの?
こんなに想われている香菜さんが羨ましくもあり妬ましくもある。こんなボロボロになるまで一途に香菜さんを想っている小笠原さんを私は見ていたくなかった。
──香菜さんが小笠原さんの中から消えてほしい……。
そう思ってしまう自分に驚いた。その一途な気持ちを自分に向けてくれたらどんな気持ちになるんだろう?
どうしようもない気持ちが溢れそうになったのと同時にその気持ちを隠したくなった。
「なんで結婚式に来ないんだ。なんで結婚できないんだ。なにがごめんなさいなんだ。……違うことでも考えてないとずっと考えてしまう。女々しい奴だよな」
小笠原さんはそう言い残してまたふらつきながら部屋へ向かおうとしたから私は咄嗟に。
“パチンッ!”
私は彼の前に立ち、両手で小笠原さんの頬を軽く叩いた。
熱のせいもあるだろうが、小笠原さんは一瞬何が起きたかわからない感じで、目を丸くしながら私を見ている。
私はその目に対して睨み返した。
「はっきり言って!!私は香菜さんが嫌いです!こんなに皆に迷惑をかけて小笠原さんをここまで追い詰めて……許せないと思います。でも今はそんなことよりも私は小笠原さんの体が心配なんです」
自分でも何を口走っているかわからなかった。今は香菜さんを忘れて安静にさせることで頭が一杯だ。
私は小笠原さんの腕を自分の肩に乗せ、ベッドまで連れていくと無理矢理寝かせた。
「小笠原さんに今必要なことは、寝ること食べること休むこと、すなわち風邪を治すことです!今、薬となにか食べるもの作ってくるので……とにかく治ってから私、愚痴でも何でも聞くので今は安静にしてください」
それだけ言い残して私は部屋を出ていった。居候の分際で小笠原さんを叩いた挙げ句、勝手なことを言ったのだ。
その上、自分の邪な気持ちも相まってその場を逃げてしまったのである。
呆気に取られていた小笠原さんは私が出ていった後で我に返る。
「すごい剣幕。……面白い女」
クックッと急に笑いが込み上げてきたのを耐えながらそう呟いたのだ。
まさか自分がそんなふうに言われているとは知るはずもなく、しばらくの間私は落ち込んでいた。