【完結】この結婚、漫画にしちゃダメですか?
次の日、いつもと違った朝食の風景がそこにはあった。
いつもはもっとパンと目玉焼きとサラダ、それに珈琲ぐらいの簡単な朝食。けれど今日はダイニングテーブルにこれでもか!という品数の料理が並んでる。
そしていつもなら、たわいもない話を簡単にしてすぐ終わる朝食。けれど今日は何を話していいかわからない。小笠原さんの顔が見られない挙動不審な自分がいる。
「いくら何でも朝からこの量は……すごいね。俺、病み上がりだからそんなに食べられないけど」
小笠原さんは昨日、お粥を食べ薬を飲んで一晩グッスリ寝ていたら熱も下がってきた。たぶん過労からくるものだったのだろう。でも大事を取って今日は会社を休むことにした。
私はというと……一晩なかなか寝られなくて寝不足なのだ。今まで散々漫画での恋愛話は描いてきたけど、いざ自分のリアルな恋愛話になるとどうしていいかわからない。
色々と考えている内に朝から豊富な食事が出来上がってしまったというわけだ。
「そ、そうですよね─。つい、小笠原さんに元気になってもらおうと張り切って作り過ぎちゃいました!」
今日の小笠原さんも何だかいつもと変わっていた。今朝はあの緩い笑顔をよく見せてくれるのだ。
ほら。今もフッと笑っている?
その笑顔は今の私にはとても眩しい。
「片桐さんは何事も極端なんだよね。感情の起伏ですぐ行動する。絶対後で後悔するタイプだ」
「た、確かに後で反省はいっぱいしますけど。でもそういう小笠原さんだってこんなに一途な人だったとは思いま……」
──ヤバッ。
私は慌てて口に手をあてて言葉を飲み込んだ。
──昨日のことを話題に出さないようにしてたのに、何自分から話題振っちゃってるのよ!
「本当だね。実際俺もこんなに人を好きになれるとは思ってなかった。正直、自分から好きになったのは初めてだったし」
「そ、そうなんですね」
何気ないその言葉にギュ─ッ……と胸が締め付けられる。