【完結】この結婚、漫画にしちゃダメですか?
山田さんがチラチラとこちらを見て鬱陶しいので、私は晴に山田さんからの頼み事をそれとなく話してみた。
「もし晴が今の同居?ルームシェア的なものが嫌だったら、私の所にしばらく居ても大丈夫なんだよ。うち神社だから部屋はまぁあるし」
山田さんも私からの申し出にうんうんと頷いている。晴は結構責任感が強いタイプだ。責任を感じているからこそ小笠原さんに手を貸しているのはわかる。でも私も正直、小笠原さんの事情で何も同居しなくたってと思うところがあるのだ。
もし晴が嫌々同居しているなら……
「ありがとう、麻希ちゃん。でも同居は別に嫌じゃないよ。そりゃ最初は小笠原さんのギャップやら色んなことに驚いたりムカついたりしたけど……最近は小笠原さんのことを勘違いしていた所もあったかな─って少しずつわかってきたし」
私はあれ?と思った。
晴はそう話しながらお酒を飲むペースが速くなっている。晴は照れや愚痴が入るとお酒をよく飲むのだ。今のこれは照れ?
顔の表情も何となく柔らかい。
──もしかして晴……。
「はるちゃん!そんなにいきなりお酒を飲んだら悪酔いしちゃうよ」
「大丈夫です、山田さん。私お酒結構強いんですから!今日は楽しく飲みましょう」
──晴。あんたお酒は好きだけど全然強くないよ。
案の定。
晴がベロベロになるまでそう時間はかからなかった。もうほとんど意識がなくテーブルに寄っ掛かって寝てしまっている。いい加減自分は酒に弱いと認識してほしい。
「はるちゃん。完璧にダウンしちゃったね。僕が送っていくからちょっと待ってて」
山田さんはそう言ってトイレに急いで行ってしまったが、私の中ではちょっと試してみたいことがあった。
いや。試すというより、ただ小笠原さんがどんな人物か知りたかっただけなのかもしれない。
だって。晴はおそらく小笠原さんのことが気になる存在になっている?
私は晴の指の指紋を借りてスマホのロック画面を解除し、電話履歴から小笠原さんの番号にかけてみたのだ。
『はい。片桐さん?もう0時過ぎてるよ。いつまで……』
「あの、突然スミマセン。私、晴の友人の稲田と言います。実は晴、かなり飲んで寝てしまっていて……小笠原さん申し訳ないんですが、迎えにきてもらえませんか?」
電話の向こうでは小笠原さんの溜め息が聞こえたが『今、迎えにいきます』と力強い言葉がすぐ返ってきた。