【完結】この結婚、漫画にしちゃダメですか?


香菜さんを見掛けてから3日目。

小笠原さんは雑誌に穴を開けてしまった代わりに、他の漫画家さんをなんとか探し出し、それ以来その漫画家さんに掛かりっきりで一度も家には帰ってこない。

私は心のどこかで小笠原さんと顔を合わせないことにホッとしている。
それは後ろめたさ?恥ずかしさ?愛しさ?……とにかく色んなものが混ざった感情で胸がギュ─と苦しくなるのだ。

でも今日はとうとう小笠原さんと顔を合わせることになりそう。つい今しがた小笠原さんからメッセージがきたのだ。

『また今日も帰れそうにないんだ。悪いけど着替えを持ってきてくれないか。クローゼットは勝手に開けて構わないから適当な服を』

「はぁ─……もう私の頭の中、キャパオーバーなんですけど。麻希に相談したいんだけどな」
昨日も麻希に連絡をとったがしばらく巫女の仕事が忙しいとのことだった。

時計を見るともう20時43分を指していた。

「小笠原さん、夕飯食べたかな?何か軽いものでも作って持っていってあげようかな」

私は夜に炊いたばかりのご飯をいくつかおにぎりにして本当に適当な服を何枚か鞄に詰めると、気の重いまま出版社へと向かった。

───────────

出版社に着く頃にはもう22時を回ろうとしていた。

ここに来るまでの間、香菜さんのことを話したほうが良いかどうか……私の中でその自問自答ばかり繰り返されていた。でも結局は答えが出ないままだ。

──香菜さんとよりを戻すことになったら私は用済み……になっちゃうよね?はぁぁ―もう!考え過ぎて頭痛い。

漫画部門のある階フロア─まで来た私は大きく深呼吸をして一旦心を入れ替える。

「あの─……すみません。優木ですが、小笠原さんいらっしゃいますか?」

扉を開けると中は薄暗く一つのデスクに明かりが灯っているだけ。そこでは小笠原さんが一人作業をしていた。フロアーには他に誰もいない。
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