【完結】この結婚、漫画にしちゃダメですか?
二人の唇が近づく
私達は自然の流れにまかせ静かに目を閉じる
そして……唇に温かな体温を感じ始めると一気に体の力が抜けていった
──小笠原さん……
“ガタンッ”
少し揺れるような音で私達は我に返った。観覧車の繋ぎ目部分にでも当たったのだろうか。
その瞬間、小笠原さんは口に手をあて自分に驚いているように見えた。
私も当然、何が起きたのか利害できていない。頭が混乱している。
しばらく観覧車の中は無言の微妙な空気が流れたが、その空気は小笠原さんの言葉で瞬く間に打ち消されたのだ。
「……ごめん、片桐さん」
「え、あ、いえ! ちょっとビックリっていうか……ぜ、全然大丈夫です!」
──このまま勢いで告白してしまおうか? だって今、メチャクチャいい雰囲気じゃない。
私は夢見心地な気分で思いきって小笠原さんに告白することを決意した。
「あ、あの私、小笠原さんのこと」
「片桐さん、同居は解消……しようか」
── …………え……。
「引っ越しやしばらくの資金は、前に言った通り俺が出す。だから片桐さんは引っ越し先を探しておいて」
「ま、待ってください! だって創立記念パーティーまでまだ一ヶ月あるじゃないですか。なんでまたそんな急に……それに今のキ、キスは……」
その言葉に小笠原さんは視線を下に落とし私と目を合わせようとしなかった。
「ごめん。今のは……特に意味はないから。だから……忘れて」
この観覧車に乗っている間に、どのぐらいの感情を私は味わったのだろう。
気まずさ、恥ずかしさ、嬉しさ、悲しみそして絶望……
もう自分の感情がぐちゃぐちゃで何も考えられなかった。ただ、ここにいると涙が溢れてきてしまいそうなことだけはわかる。早くこの場を立ち去りたい……
私は一言だけ
「……わかりました」と。
小笠原さんの言葉を受け入れた途端、今までの生活が終わりに向け動き出したのである。