【完結】この結婚、漫画にしちゃダメですか?
観覧車から降りた後、私は急用を思い出したと伝え小笠原さんと別れた。今思えば苦しい言い訳ではあったけれども。
そしてその日は小笠原さんの家に帰りたくなくて麻希の神社へ行き、今までの経緯や感情を全部吐き出したくさん泣いてしまった。
麻希は最初、複雑そうな顔をしていたけど、黙って私の話を聞いてくれたのだ。
泣いて泣いて……泣きまくって
そのおかげか、少しずつ自分も落ち着きを取り戻してきたのだ。
あれから二日。小笠原さんとは顔を合わせていない。最初メッセージに友達の家へ泊まると伝えたっきり。
「晴、大丈夫? うちはしばらくいてもらって構わないんだよ」
「うん。ありがとう。でも大丈夫! 漫画も大詰めだし、いつまでも逃げてばかりじゃいられないもんね。それに家も早く探さなきゃいけないし」
「そっか。でも私はてっきり小笠原さんも晴のことが好きなんだと思ってたんだけどね」
この二日間ずっと麻希はそんなようなことを言っている。何を根拠に言っているのかわからないが、そんなことはありえない。
「もう─、その話はもういいから。小笠原さんの中には結局、香菜さんしかいないのよくわかったから。……あ―それにしても告白はしなくて良かったかも」
「ん─そうなのかな─?……けど、どうして急に同居を解消する気になったのかな」
──それは私も気にはなっていた。あの時は頭がいっぱいで何も考えられなかったけど、少し冷静になってみると小笠原さんはなぜ急に解消しようと思ったのか。
麻希の神社を出た後、その足ですぐ近くの不動産屋に寄った。せめて目ぼしい物件を見つけていたかったのである。
不動産屋の窓に張られているたくさんの物件のチラシ。私がそれをジ─と眺めていると突然、男の人の声で「香菜ちゃん!」と呼ばれたのである。
その声に聞き覚えのある私は慌てて後ろを振り返った。