若き金融王は身ごもり妻に昂る溺愛を貫く【極上四天王シリーズ】
「俺、美夕さんと親しくさせてもらってます。言葉通りの意味じゃないってわかりますよね? 美夕さんの心は、もうあなたにない。さっさと離婚してほしい」

「青谷くん……!?」

もちろん、青谷の話は事実とは異なる。

なぜそんな嘘をついてまで慶にかみつくのか、美夕は理解できず混乱する。

この行動は青谷の正義感や親切心からくるものなのだろうか、それとも……?

穏やかな表情をしていた慶だったが、とうとう口もとの笑みが消えた。

「それは妻に対する侮辱か?」

ぞっとするほどゆったりとした低音が慶の口から放たれる。

その眼差しを見て、青谷も美夕も背筋をひやりと冷たくする。

「釣った魚? 私は妻をそのように思ったことはないよ。他人の心を掌握できるものだと考えているとしたら、それは傲慢としか言えないな。美夕はいつだって自由に選択している」

慶は再び余裕の笑みをたたえる。

場の空気は凍てついたままだが、美夕の胸には熱いものが込み上げていた。

『美夕はいつだって自由に選択している』――確かに慶は、いつでも美夕に選択肢を与えてくれる。

逃げ場を用意した上で、先に進む覚悟はあるのかと問いかけてくる。

心も、行動も、拘束されたことは一度もない。どんな道を進もうと、いずれも納得の上で美夕が選んだものだった。

< 129 / 254 >

この作品をシェア

pagetop