若き金融王は身ごもり妻に昂る溺愛を貫く【極上四天王シリーズ】
年月は早いものだなと慶は息をつく。
自分の中の美夕は、ピンク色のドレスを着た八歳の愛らしい女の子だったのに。襖を横切った影は、背が高くすらりとした、立派な女性のものだった。
「覚えているかい? 君がまだ学生の頃、娘をもらってくれないかと話したこと」
「まだ覚えていたんですか」
懐かしさにふたりの口もとが綻ぶ。
しかし、この時期の慶は結婚にいいイメージを持っていなかった。疲れた顔で肩を竦める。
「今は正直、縁談がわんさか舞い込んできてうんざりしています。海外出張を理由に濁していますが、強引な方も多くて。ああ、勅使河原議員をご存じですか? 娘をもらってくれとしつこくて」
名前をあげると、花柳は額に手を当てて困ったように笑った。
「よーく知ってるよ。よりにもよってあの男か」
「涙の会見、ご覧になりましたか。『秘書を殺したのは私であるも同然です』とカメラの前で土下座して。世論は同情的に捉えましたが、暗に自分のせいではないと責任逃れしているんですから、とんでもない男だ」
「ああ。実際、秘書を殺したのは勅使河原議員だと思っているよ。表向きには秘書の自殺という話になっているが、疑わしい遺書が見つかった。揉み消されてしまったけどね」
「遺書……? 先生はなぜそんなことをご存じなんですか?」
自分の中の美夕は、ピンク色のドレスを着た八歳の愛らしい女の子だったのに。襖を横切った影は、背が高くすらりとした、立派な女性のものだった。
「覚えているかい? 君がまだ学生の頃、娘をもらってくれないかと話したこと」
「まだ覚えていたんですか」
懐かしさにふたりの口もとが綻ぶ。
しかし、この時期の慶は結婚にいいイメージを持っていなかった。疲れた顔で肩を竦める。
「今は正直、縁談がわんさか舞い込んできてうんざりしています。海外出張を理由に濁していますが、強引な方も多くて。ああ、勅使河原議員をご存じですか? 娘をもらってくれとしつこくて」
名前をあげると、花柳は額に手を当てて困ったように笑った。
「よーく知ってるよ。よりにもよってあの男か」
「涙の会見、ご覧になりましたか。『秘書を殺したのは私であるも同然です』とカメラの前で土下座して。世論は同情的に捉えましたが、暗に自分のせいではないと責任逃れしているんですから、とんでもない男だ」
「ああ。実際、秘書を殺したのは勅使河原議員だと思っているよ。表向きには秘書の自殺という話になっているが、疑わしい遺書が見つかった。揉み消されてしまったけどね」
「遺書……? 先生はなぜそんなことをご存じなんですか?」