若き金融王は身ごもり妻に昂る溺愛を貫く【極上四天王シリーズ】
二十一時、夕食を食べてから帰宅すると、マンションの前に大きなトラックが停まっていた。

運び出される家具に見覚えがあり、まさかと蒼白になる。

階段を使い三階まで駆け上がり、踊り場で足を止める。やはり運び込まれているのは美夕の部屋のもの。

六年前、北菱家に帰ってきたら、自室が空になっていたことを思い出した。

「ちょっとすみません!」

荷物を運び出す作業着の男性を押しのけて家の中に上がり込むと、リビングの中央にスーツを着た慶の姿。

美夕の姿を目にすると「ちょうどいいところに来た」と言って、左右の手にそれぞれ一枚ずつ、紙を掲げた。

「荷物の運び先を選べ」

紙には地図が印刷されている。美夕は両方の紙を慶の手から奪い取り、わなわなと震えた。

「……というか、またあなたは私の承諾もなく勝手に荷物を運び出して」

六年前は百歩譲って仕方がなかったと思える。

美夕はまだ社会に出ておらず、ひとりで生きていくことなどできなかったのだから、だれかの保護を受け、その結果振り回されることになっても文句を言える立場ではない。

だが、もう美夕は社会人だ。本人への確認もなしに、立ち退きまがいの実力行使に出られるのは不本意である。

と同時に、ここを追い出されるということは、慶が夫婦になるのをあきらめたのだと美夕は悟った。

< 66 / 254 >

この作品をシェア

pagetop