若き金融王は身ごもり妻に昂る溺愛を貫く【極上四天王シリーズ】
「俺がその男に言ってやろうか? 『美夕さんはもうあんたに興味ありません』って」

「ややこしくなるからやめて……」

青谷はやたらと慶を敵視する。それだけでなく、寂しいだろうからと気を遣って、美夕を食事に誘ったり、休日レジャーに行かないかと頻繁に声をかけてくる。

とはいえ美夕は、慶以外の男性に深入りするつもりはないので、誘いを断るたびに申し訳なさを感じ、できればこれ以上誘わないでほしいなあとこっそり祈っていたりするのだが。

「もしかして、あれかな」

桃山は興味でも冷やかしでもなく、名探偵が推理を披露するかのごとく人さし指を立てた。

「北菱さん的には、そう言ってもらえるのを待ってた、みたいな?」

ドキリと心臓が大きく鳴る。

「え。嘘だろ」

思わず青谷から視線を逸らす。

違うと言えるだろうか。慶に夫婦として向き合うつもりがあると宣言されてから、美夕の心はぐらぐらと揺れている。

「北菱、そうやってすぐ許しちゃうのが、ダメ男にハマる女の特徴。不幸になるぞ」

青谷の言葉が耳に痛い。慶にぞんざいに扱われていたと思う反面、最近では大切に守られていたのではないかとも感じる。

惚れた欲目と言われれば、否定できないのだが。

(いやいや、惚れてなんてないわ。憧れていたのは、十六年も前の話。子どもの頃のことよ)

美夕はPCに向き直り、ごちゃつく考えを振り払った。



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