若き金融王は身ごもり妻に昂る溺愛を貫く【極上四天王シリーズ】
ふと部屋の外が騒がしくなったことに気づき、美夕は顔を上げた。きっと夫が帰ってきたのだ。

出迎えるもの、夜食を用意するもの、風呂を入れるもの、使用人たちが各々の役割を果たすべく、廊下を歩き回っている。

美夕も己の役割を果たそうと、きゅっと唇を引き結んだ。

とはいえ、帰ってきてそうそう寝室には来ないだろう、もう少し時間を潰そうと、再び携帯端末に目を落としたとき。

ガチャッとドアの開く音がする。慌てて顔を上げると、そこにはスーツを着た夫が、鋭い眼差しを携え立っていた。

「慶さん……!」

部屋は明るいまま。ベッドから出ている美夕の上半身を見て度肝を抜かれたのか、慶はわずかに目を見開いて沈黙している。

美夕は『愛されるカラダ♡の作り方』特集を熟読していたことにやましさを感じ、咄嗟に携帯端末を枕の下に隠したが、本当に隠すべきはそこではないと気づいて、慌てて胸の前で腕をクロスさせた。

「あの、これはっ……」

帰宅直後の疲れ切った男にさらすべき姿ではない。

恋愛経験の少ない美夕でも、慶が引いていることは伝わってくる。

言い訳を巡らせているうちに、慶はうしろ手にゆっくりとドアを閉め、腕を組んだ。

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