若き金融王は身ごもり妻に昂る溺愛を貫く【極上四天王シリーズ】
美夕は足をバタバタさせるけれど、慶はうっとうしそうに眉間に皺を寄せただけで、降ろしてはくれなかった。

「お前の父親も、酒が弱かった」

「それは……遺伝、ね」

ふと、慶は父親とどの程度親交を持っていたのだろうかと気になった。酔ってぼんやりとはしていたが、一応頭は働いている。

「慶は、父と、親しかったの?」

慶は答えないまま廊下を出て、美夕の部屋のドアを器用に開ける。部屋は暗いが、廊下から漏れる明かりがぼんやりと中を照らしてくれた。

美夕の体をベッドに横たえながら、慶はようやく口を開く。

「父親を恨んでいるか?」

「なぜ? そんなわけないわ」

「お前は父親に振り回されて生きてきた」

「父は悪くない」

そのひと言で、美夕の気持ちは慶に伝わったようだ。

父は無実であると信じている。悪いのは父ではなく、父に罪を着せた、世の中の方だ。

慶の口もとがわずかに緩んだように見えたが、廊下の明かりが逆光になっているため、確信は持てない。

慶のことは知らないことばかりだ。父との関係も、仕事のことも、どんな幼少時代を過ごしてきたのかも、趣味や特技、休日の過ごし方も。

「慶のことを、もっと知りたい」

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