童話書店の夢みるソーネチカ
 カウンター脇から外に出てテーブルスペースに向かう。ペンやらハサミやら道具が多くなったので網かごに入れ、それを本の上にのせて運ぶ。

 この絵本は柳木の私物らしいが、傷をつけても怖いので丁重に扱おう。  

 ゆかは漢字の読み書きを練習しているようだった。横長のワークブックが広げられ、『牧』や『陸』といった文字が見える。

 そばを通ると人の気配を感じたのか、ゆかは手を止めて顔を上げた。

「あ、さっきのお姉さん」  

 再び丁寧にお辞儀するものだから千花はうろたえてしまう。  

 女の子同士、もっと気を抜いて話してみたい。そう思い、普段友達と話すような態度を心がけて千花は挨拶した。

 見栄を張って少しお姉さんぶった気もするけど。

「私ここでアルバイトしてる相根千花っていうの。店長から聞いたけどゆかちゃんっていうんだね!仕事任されちゃって今からここで作業するんだけど、ゆかちゃんともお話したいなーなんて」

「千花さんですか?実は入り口で会った時から気になってました。きれいなお姉さんだなあって」

 つい顔がにやける。

 きれいなお姉さんかあ……私からすればゆかちゃんの方がよっぽどかわいいし目を奪われちゃうよ。  
 千花は一つ下のつんけんな弟にうんざりしていて、昔から妹が欲しかった。

 ゆかちゃんがうちの妹だったらいいのになあと惚けていると、彼女から不意打ちの爆弾をお見舞いされる。
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