童話書店の夢みるソーネチカ
「ま、まあそれはそうとして、千花もやはりこの作品の良さがわかるか。表紙だけでも満足の出来栄えだ。さっきの薄い反応からしてミニーノットは知らなかったみたいだが。勉強不足だな」
 
 ミニーノットっていう作者の絵本だから、柳木さんは大物作品と呼んだのかな。  

 絵本界隈では有名な方なのだろうか。少しずつ絵本の知識も増えているが、作者まではまだ手が伸びていない。

 だから案の定揶揄され、湿った視線を浴びせられている。  

 決まりが悪くなり、千花は質問をして乗り切ることにした。

「そんなに人気の方なんですか?名前的に外国の人ですかね」

「ペンネームが英語なのは珍しいが日本人らしい。それにまだ新人でこの『シンデレラ』で三作目。だが千花も感じたように、読む人を魅了する優雅な絵のタッチで注目されてんだ」

 絵本に関わる柳木がいうのだから、ミニーノットの才能は専門的に見ても他と一線を画すのだろう。

 柳木は一人のファンとして彼(彼女?)の絵を好いているようだった。  

 POP製作用の道具がそろったところで、先ほどのメガネの少女が階段を下りてくるのが見えた。

 右手にハードカバーの本を持っている。会計に降りてきたんだろう。  

 柳木も彼女を視界に入れると、早口で千花に指示を飛ばした。

「せっかくだからゆかの隣の机で作業してこい。勉強見てやってもいいぞ。余裕があったらこの店の宣伝用ポスターも一枚作れ、ゆかの小学校に貼ってもらおうと思ってる」

「了解しました」
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