雷鳴に閉じ込められて
「女は剣を握っちゃいけないなんて、そんなの馬鹿らしい。自分の好きなことをしてみたい」

萌黄は友達の家から、彼女の兄が使っていた稽古袴を貰い、それを着て剣術を勉強することにした。両親や兄がそれを許すとは思えないので、稽古場へは行かずに独学で学ぶしかないが……。

みんなが眠りに着いた真夜中、萌黄は布団を抜け出し、胸にサラシを巻き付け、稽古袴を着て髪を一つに結ぶ。鏡をそっと覗いてみると、男性と見た目が変わらない自分がおり、萌黄は少しホッとした。

「よし、行こう!」

兄が使わなくなった竹刀を手に、萌黄は家の裏口から外へと出る。江戸の街は静まり返り、昼間とは全く違う雰囲気だ。

夜空に輝く月明かりを頼りに萌黄が向かったのは、家から二十分ほど離れた場所にある神社だ。昼間でもそこは薄暗いため、人気が全くない。

「あの神社なら、きっと誰にも見られることなく練習できるよね」

ずっと興味があった剣を振れるのならば、どんなに暗くても恐怖はない。むしろ、心はわくわくとした気持ちで満ちている。
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