妹と人生を入れ替えました~皇太子さまは溺愛する相手をお間違えのようです~
「なんだよ、憂炎の奴」


 憂炎が何と言おうと、あいつの妃は二人存在している。
 昨日まで期間限定の妃をしていたわたしと、これから先ずっと、憂炎の妃として生きていく華凛。あいつが想い描く『凛風』という虚像の中に、二人存在しているんだ。

 そんなこと、憂炎は当然知らない。だけど、事実は絶対変わらない。


(どうして憂炎はあんなに怒ってるんだ?)


 普通、これまで散々可愛がってきた妹分に『妻になりたい』なんて言われたら喜ぶものだろう。不敬と受け取った可能性は無きにしも非ずだけど、それにしたって変な怒り方だ。あいつの考えが、わたしにはちっとも理解できない。


(でも、これで良いんだよな)


 これでもう、憂炎がわたしを求めることはない。
 だって、わたしは『華凛』だ。これから『華凛』として一生、生きていくんだもん。

 憂炎は思う存分、華凛を――――『凛風』を求めてくれれば良い。


「憂炎のバカ」


 呟きながら、訳もなく胸が痛んだ。
< 50 / 74 >

この作品をシェア

pagetop