妹と人生を入れ替えました~皇太子さまは溺愛する相手をお間違えのようです~
 そうして彼女は、凛風――『華凛』を呼び寄せ、再び入れ替わりを果たすことを提案をした。それから『華凛』として、あいつを思い切り甘やかすことも。そうすれば凛風は、華凛に事情を確認しようとするに違いない、と。

 事実、華凛の思惑通り事は進んだ。

 『華凛』として俺の前に現れた凛風を見た時は、憎たらしくて――――けれど物凄く愛おしくて、気が狂いそうだった。
 あいつに触れる度、喉から出そうなほど、強い欲望が自分を支配した。
 名前を呼べないことが出来ないのがもどかしくて。もっと、心のままに抱き締めてしまいたい。

 けれど、俺が触れる度に、凛風は不機嫌な顔をした。
 俺が凛風を想う様に、凛風が俺を想っていないことは明白だった。

 だけど、それでも――――。


 それから数日後。凛風が後宮を訪れ、華凛が後宮を去る。

 あいつが後宮に――――凛風として――――俺の妃として居るのを見て、堪らなく嬉しかった。

 ようやく欲しかったものが手に入る。
 触れる度、唇を重ねる度、抱き締める度、心が喜びに打ち震えた。

 だけど、凛風は俺から逃げようとした。
 何度も、何度も。
 こんなに、愛しているのに。

 罪悪感を感じなかったわけではない。
 凛風の笑顔が曇るのを見る度、苦しくて堪らなくなる。

 自由を愛する凛風が、後宮という狭い檻の中に囚われ、退屈なのだろう。息苦しいのだろう。
 それでも、俺は自分のエゴを優先した。
 
 俺は後宮が嫌いだ。女が嫌いだ。
 自分が隠匿された原因が、皇后――――彼女の嫉妬のせいだ、っていうのが大きい。

 俺は凛風以外の妃を娶るつもりはない。後宮だっていずれは解体する。
 凛風を自由に、何処へでも行けるようにしてやるつもりだった。かなり時間は掛かるだろうが、それでも。
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