スキナダケ
「誰を許さないって?」

「…」

「ねぇ…もう一回言ってみてよ。誰を許さないって!?」

「ごめ…ごめんなさい…ごめんなさい…!」

「許すかどうかをお前が決める権利なんて無いんだよ。ハナがお前を許さないの。それだけ。分かった?」

「はい…はい…ッ…ごめんなさい」

恐る恐る顔を上げた夕海は、壁に付いた血を見て、またキツく目を閉じた。

ハナは夕海のところに戻って、頬に触れながら顔を上げさせた。

「ぃゃ…っ」

「ダメ。ちゃんと見てて」

「むっ…無理だよ」

「だーめ。じゃなきゃ二度と何も見えなくしちゃうよ?」

夕海の目元に指先で触れる。
人差し指と親指で、夕海の右目の瞼と下瞼をクッと押した。

「ヤダッ…!やだやだやだお願いやめてお願いちゃんと見るからちゃんと見てるからお願いやめて!やめて!!!」

壊れたオモチャみたいに捲し立てる夕海にキスをした。
何度も何度もキスをした。

彼氏が夕海、夕海って上げる泣き声に呼応するように、キスを繰り返した。

「ちょっと静かにしててくれるかな?」

下唇を噛んで、電池が切れたみたいに静かになった夕海の頭を撫でて、また夕海の左手を握った。

白かったTシャツの切れ端はすっかり真っ赤だった。

リップを塗るように自分の唇に当てたら再び強い鉄のにおいと味がした。
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