スキナダケ
「おばちゃん、ごめーん!棚組み立ててたら思いっきり倒しちゃって!ちょっと壁破損させちゃったよ。僕も力つけなきゃダメだよねぇ!」

おばちゃんにも野次馬達にも聞こえるようにハナも叫んだ。

夕海達だって勇気を出して大声を出せばここで救助されるかもしれないのに、未だナイフを突き付けられてると思ってる彼氏はもちろん動かないし、夕海にそんな勇気はもう少しも残ってないだろう。

「そうだよ!アンタ、顔がいいだけじゃ生きてけないよ!」

「でもおばちゃん、僕の顔好きでしょ?」

「そりゃそうだよ、私があと二十若けりゃねぇ」

おばちゃんはハナの顔ファンだ。
顔を合わせるたびに、いい男だなんだって言いながら笑っている。

おばちゃんが手を振りながら家の中に引っ込んで、くだらない理由にシラけたみたいに野次馬達もそそくさと離れていった。

本当に棚が倒れただけであんな音がするなんて何人が信じたか分かんないけど、玄関からお父さんが家の中に入ってくるのが見えた。

みんなが一斉に離れていった理由はコレだろう。

お父さんが帰ってきた。
そろそろタイムオーバーかな。

窓とカーテンをしっかり閉めて、今、リビングで待機してるであろうお父さんのスマホにもう少し待っててってメッセージを送った。
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