先輩とわたしの一週間
慌ててシャツの裾を限界まで引き伸ばし、そして晴香は小さく丸まった。服が伸びてダメになろうがもうそんなこと知ったことではない。穴があったら、とはまさに今だ。でもそれと同じくらい羞恥で死ぬ。そしてこの状況を作り出した原因をこの手で消し去りたい。そんな物騒な思考に辿り着くまで秒すらかからなかったが、諸悪の根源はそんな晴香の思惑など知るものかと丸くなった晴香を抱え上げるとそのままベッドに放り投げた。
ぎゃ、と可愛らしさからほど遠い叫びをあげつつ、それでも急ぎ体勢を立て直そうとした晴香であるが、ベッドの縁に腰をかけた葛城に両腕で体を挟み込まれては身動きがとれない。
「……先輩」
「おう」
「これはもしかしてですよ」
「世間で言うところの」
「襲われそうというやつですか?」
「まあそんなところだな」
「……と、思わせておいて、ほんとうのところ」
「と思いたい気持ちは分からんでもないが、残念ながら答えは同じだな」
「嘘でしょおおおおおおお!!」
ジタバタと暴れると容赦なく頭を押さえつけられた。
「婦女暴行!」
「まだしてねえよ」
「これ! 今まさにわたし暴行うけてるー!」
「お前がうるせえからだよ少し静かにしろ。お前のボロアパートと違って壁は厚いけどそれにしたって限度があるんだ」
「うちだってそこまで薄くないです-! それにボロじゃないですし!」
「お? ならそのうちお宅訪問させろよ」
「前もって言ってくれたらまあ先輩ならいいですよ……って違う! そんな話じゃなくて!」
「日吉」
「はい!」
ふいに声の質を低くされ、まるで職場にいる時の様な雰囲気を出されれば即座に従ってしまう己の反応が憎い。話を聞く体勢になってしまったせめてもの反抗にと、晴香は目一杯眉間に皺を寄せてみた。そんな晴香を気にするでもなく、葛城は「お前さ」と口を開く。
「俺となに話したか全く覚えてねえの?」
「……なんか……仕事きつかったですねとか……」
「それは店に入ってすぐ辺りだな。その後は?」
あと、と懸命に記憶を探る。なにしろ現状を打破するにはそれしかない、ようだ。別に先輩に襲われるのがいやだとかそういのじゃないけどでもわけもわからずそういうことになるのはなんていうか一応乙女心的なのが、と一瞬の内に駆け巡った思考に晴香は愕然とする。
ぎゃ、と可愛らしさからほど遠い叫びをあげつつ、それでも急ぎ体勢を立て直そうとした晴香であるが、ベッドの縁に腰をかけた葛城に両腕で体を挟み込まれては身動きがとれない。
「……先輩」
「おう」
「これはもしかしてですよ」
「世間で言うところの」
「襲われそうというやつですか?」
「まあそんなところだな」
「……と、思わせておいて、ほんとうのところ」
「と思いたい気持ちは分からんでもないが、残念ながら答えは同じだな」
「嘘でしょおおおおおおお!!」
ジタバタと暴れると容赦なく頭を押さえつけられた。
「婦女暴行!」
「まだしてねえよ」
「これ! 今まさにわたし暴行うけてるー!」
「お前がうるせえからだよ少し静かにしろ。お前のボロアパートと違って壁は厚いけどそれにしたって限度があるんだ」
「うちだってそこまで薄くないです-! それにボロじゃないですし!」
「お? ならそのうちお宅訪問させろよ」
「前もって言ってくれたらまあ先輩ならいいですよ……って違う! そんな話じゃなくて!」
「日吉」
「はい!」
ふいに声の質を低くされ、まるで職場にいる時の様な雰囲気を出されれば即座に従ってしまう己の反応が憎い。話を聞く体勢になってしまったせめてもの反抗にと、晴香は目一杯眉間に皺を寄せてみた。そんな晴香を気にするでもなく、葛城は「お前さ」と口を開く。
「俺となに話したか全く覚えてねえの?」
「……なんか……仕事きつかったですねとか……」
「それは店に入ってすぐ辺りだな。その後は?」
あと、と懸命に記憶を探る。なにしろ現状を打破するにはそれしかない、ようだ。別に先輩に襲われるのがいやだとかそういのじゃないけどでもわけもわからずそういうことになるのはなんていうか一応乙女心的なのが、と一瞬の内に駆け巡った思考に晴香は愕然とする。