先輩とわたしの一週間
「思い出した……って感じじゃねえなその顔。なんでそんなこの世の終わりみたいな面してんだ」
「いや……いやいやいやちょっと待ってください先輩落ち着きましょう」
「俺は落ち着いている。お前が落ち着け」
「わたしだって落ち着いてますー!」
「酔っ払いと同じだな。そう言うヤツほど落ち着いてない」
「それを言うなら先輩だって!」
「なんだよ俺に襲われるのが別にイヤってわけじゃねえな、ってのに自分で驚きでもしたのか?」
「なんでわかるんですか!?」
「お、マジか」
「あーっ!! 嘘! 嘘です!!」
「いや嘘じゃねえだろ」
「じゃあ間違えた!」
「間違いでもねえっての」
「なんで先輩がわたしの気持ちを」
「だってお前言っただろ」
「なにをですか!?」
「俺にお前の処女くれるって」

 言葉が耳から入って脳に届いて意味を理解するまでたっぷり数えて二十と少し。
 顔どころか全身を朱に染めて晴香はベッドの上で身を捩った。

 全てを思い出した――とはまだ言い切れないけれども。
 とんでもない問題発言をした事だけははっきりと思い出した。


「先輩――処女って面倒くさいんですかね?」


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