キミの恋のはじまりは
『……莉世、教室入ろ』



泉が手を引いてくれるから、その温もりで、気持ちが解れて固まっていた体がやっと動き出す。

でも、それがまたからかわれる原因となることを、私はわかっている。



『手!手つないでる!』

『うわぁ、やらしい~』

『いちゃいちゃしてる~』

『片桐は~、高藤が大好きでーすぅ』



甲高い笑い声が廊下に響くけれど、ほかのクラスメイトたちは見て見ぬふりだ。

泉だけがいつも助けてくれる。いつも気にしてくれて……、嫌な思いをさせてしまう。

それが苦しくてしかたがない。



『い、泉、もう、いいよ』

『よくない』



手を振り払おうとするけれど、その手に強く力が込められて離れられない。

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