キミの恋のはじまりは
『いいかげんにしろよ!』


我慢できなくなった泉が言い返せば、彼らはさらにからかってくるかと思ったら、反対にすっと表情を消したように私たちを見据えた。


……あ、だめだ。

直感的にそう感じた。

泉を巻き込んじゃいけない。

泉は関係ない。悪いのはうまくできない私。

そう思うのに、喉が震えて声が出てこない。



『……片桐、なんか最近むかつく』

『これ、一緒にかけちゃおうっかな~』



口元を歪めた2人は、今度こそ筆洗いのバケツを私たちの方へ向かって、勢いよく傾けた。

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