キミの恋のはじまりは
やっぱり、言わなければよかった……。


じわりとまた嫌な気持ちが浮かんできて俯いたとき、「なんだ、それ…。どんだけかわいいんだよ」とその場にそぐわない苦笑い混じりの声が落ちてきた。

その声につられる様に視線を上げれば、泉のふやけた顔があった。


…むぅぅ…。なんなの。……やっぱり泉は余裕。私だけいつもいっぱいいっぱいだ。


でも、泉が目を細めてくれると張り詰めていた気持ちが緩んで、取り巻く空気が軽くなる。

握った手をぎゅっとしてくる嬉しそうな泉にほだされそうになるけど、はっと気持ちを立て直す。



「……いや、だからね!チョコ、花島さんのだけもらったでしょ?!」

「もらってないけど?」


……ん?


私が首をかしげると、泉も同じように首をかしげる。


「え、いやいや、嘘つかないで。みたよ、今日、駅のホームで。顔寄せ合って紙袋の中覗いて、こうやって花島さんが泉の胸をつつくの見たんだから!」

「それが、嫌だったんだ?」

「そうだよ!泉に触っていいのは私だけなの!ほかの人は触っちゃだめなの!」

「そう…莉世は俺に触りたいんだ?」

「へ?いや、そういうことじゃなくて……」

「じゃぁ、ちがうの。触りたくない?」

「はっ、そういうことでもなくて……」

「どっち?」



柔らかい声で囁いて、握っていた手から僅かに覗いている私の指先にちゅっと唇を落とすから、心臓が飛び跳ねた。



「~っっ!!」



くすくすと意地悪な笑みを浮かべる泉を見れば、顔に熱が集まってきて息が詰まる。


「ほんと、かわいくて困るわ」



蕩けるように優しく、困ったように苦しそうに呟く泉に、胸が高鳴って仕方がない。


で、でも。

なんか、話が違う方に行っている気がする……。

もしかして誤魔化されている?!



「……嘘はやだ。もらってたよね?」



キッと目に力を入れて睨めば、泉は少しの間なにかを考えて、私の手を離して不機嫌そうに小さくため息をついた。



「……チョコって、これでしょ?」



傍らに置いていた鞄から、あの鮮やかな色の紙袋を取り出した。

それを手にする泉をこんなに間近で見るのは、想像していたよりも堪える。

花島さんの華やかな笑顔が浮かんできて思わず俯くと



「……これ、もらったんじゃなくて。俺が買った」



泉は決まり悪そうに視線を私から外して、その紙袋を差し出した。


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