キミの恋のはじまりは

はい、予想通り。

今日はバレンタイン当日ですから……わかっていましたよ、こんなことだろうと。



「期待を裏切らいない男だな、アイツ」



いつもの自動販売機の傍らに張り付いて、女の子3人に囲まれる泉を絶賛観察中の私と真由ちゃんと……。


……唯一、予想外といえば、この人だ。



「なんで、葉山さんがいるんですか?」



真由ちゃんが怪しんだ声を出すと、葉山さんは太陽率満杯の笑顔で「面白そうだから」とにんまりしている。



「……葉山さんが早く帰っちゃたら、困る子がたくさんいそうですけどねぇ」



じっとりと落とした真由ちゃんの視線は、葉山さんの持っている大きな紙袋に向けられた。

そこにはチョコがたくさん入っている。しかも2袋も持っている。



「リアルに紙袋にチョコいっぱいの人って、初めて見ましたよ」

「いやぁ、俺って穏便に済ますたちだからさぁ~、もう疲れちゃったよ~」

「うわっ、それってクズ発言ですよ!」

「そ?公平で優しいって言ってくれる?」

「……葉山・クズ・恭平。ミドルネームあげます」



私の後ろでやはり波長の合う会話を繰り広げているふたり。おかげでざわざわしていた気持ちが少しおさまってきた。

目を閉じて胸に手を当て、大きく息を吸い込んで、ゆっくり吐く。

瞼の裏に浮かんだ誓いを、そっと心の中でなぞる。


今日は……、今日こそは……、近づくって決めたんだ。



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