キミの恋のはじまりは
少しの間、泉の後ろに立っていたけれど、こっちに視線が来ることはなさそうなので、私はまたベットとローテーブルの間に戻り、膝を抱えて座った。
見ていた泉の背中から視線を巡らせる。
見慣れた部屋。見慣れた本棚。見慣れた壁のポスター。
……見慣れた泉の後ろ姿。
どこを見回しても、既視感しかない部屋の中。
……いつまでそういられるだろう。いつか変わるんだろうか。
ゆっくりと瞬きをして、窓の外をぼんやりと眺める。
泉が動かすペン先が紙の上を擦る音だけが、静かな部屋の中で不規則に鳴っていて、心地よくなって瞼が重くなっていく。
さっきまで快適だったはずのクーラーの冷気が眠気をはらんだ身体をひんやりとさせ、思わず小さく身震いした。
Tシャツとデニムのショーパンだったのを今更悔やむ。