キミの恋のはじまりは
急に目元を緩めて優しく笑うのも。
泣きたくない時、不意に現れて、涙を止めてくれるのも。
立ち止まりそうな時、手を引っ張ってくれるのも。
転びそうな時、いたたまれない時、逃げ出したい時。
なぜかいつも助けてくれるのは、全部、泉にとって普通のことなんだ。
……きっと、私の知らないところでも同じ。
学校での泉を想像しようとするけれど、上手くできない。
中学の泉、高校の泉。きっと私が今まで気がつかなかった優しい泉ばかりだろう。
……ほんと、幼馴染って不便だ。
パーカーを掴んでいた泉の手が、首元から離れていく。
泉が伏せていたまつげを上げる気配があったから、私はそれに捕まらないように膝頭にまた頬をつけて目を閉じる。