純愛カタルシス💞純愛クライシス
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 学くんと穏やかな?夜を迎えて、元気を分けてもらった数日後、いつものように午前中の業務を普通にこなし、お昼ご飯を食べた。

 お化粧直しを終えてトイレから出ると、なぜか目の前に堀田課長が現れる。

(――もしかして、私がトイレから出てくるのを待っていた!?)

「小野寺さん、話があるんだ」

「なんでしょうか?」

 出待ちされていたことに疑問を感じていると、深刻そうな表情で訊ねられる。

「ちょっと込み入った話になるから、そこのミーティングルームで話をしてもいい?」

 周囲がガラス張りになっているところなので、ふたりきりになっても大丈夫だろうと判断。話を聞くために堀田課長のあとに続いて、ミーティングルームに入った。

「小野寺さんさ、離婚するとき、弁護士を使ったりしたのかな?」

 突然なされた質問に、少しだけ面食いながら答える。

「いえ、そういうのは……」

「恥ずかしい話なんだけど昨日の夜、妻に迫ったら断られちゃってね。『アンタと結婚したのは、お金が目当てだったの。下手くそなくせに、手を出してこないでよ』なんて言われてしまってさ。僕を好きで結婚してくれたんじゃなかったことが、思った以上にショックだったんだ」

「そうですか……」

 夫婦間のダークな話に、心がずんと重くなる。学くんに元気を分けてもらっていなかったら、もっと沈んでいたかもしれない。それくらい、あまり聞きたくない内容だった。

「妻が僕に気がないのに、このまま結婚生活を続けていくのが、どうにもつらくなって。それで小野寺さんに、相談してみようと思ったんだけど……」

 肩を落としながら、しょんぼりする姿を目の当たりにして、なにかできることはないかと考えてみる。普段仕事でお世話になっていることもあるし、私が困ったときには、一番に手助けしてくれたのが堀田課長だったから、なおさら助けてあげなければと思った。

「私が離婚したときは、夫の浮気で離婚したんです。あのときは話し合いとか本当にできない状態で、一方的に慰謝料と離婚届を突きつけられた状態だったので、弁護士は使えませんでした。なので堀田課長が考えるような、離婚にはならないかと」

 俯いて過去のことを口にした途端に、堀田課長は慌てふためいた。

「ごめん! ああ僕は自分のことばかり考えて、小野寺さんのことを考えてあげることができなかった。つらいことを思い出させてしまって、本当に悪かった」

「大丈夫です、もう終わったことなので」

 ものすごく恐縮して済まなそうにされてしまい、今度はわたしが困る番。両手でまぁまぁというジェスチャーを駆使し、大丈夫なことをアピールした。

「本当にごめん、お詫びさせて。そうだな、部署のみんなも誘って、今度飲みに行こうか」

「はい……」

「プライベートなことを無理に聞いて、本当に悪かったね。たまにでいいから、僕の愚痴を聞いてもらえる?」

 頭を深く下げられて頼まれてしまったら、断ることなんてできない。それに話を聞くぐらいなら、私にもできることだった。

「いいですよ。私はアドバイスなんてできないので愚痴くらい、いくらでも聞きます」

「優しいね、小野寺さんは。ありがとう」

 このことがキッカケで、ときどき堀田課長の話を聞く羽目になってしまったのだった。
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