純愛カタルシス💞純愛クライシス
♡♡♡

 堀田課長の愚痴をたまに聞くことが苦になりつつも、その場しのぎの優しい言葉をかけて、日々やり過ごしていた、そんなある日。

 職場で仲良くなった渡辺さんと一緒に、社食でお昼を食べていたら。

「小野寺さんさ、彼氏いるの?」

 いつもは仕事の話をしている彼女からのプライベートな質問に、どうしたんだろうと思いながら口を開く。

「はい、いますけど……」

「うわさ話をネタにして騒いでる、一部の女子社員いるじゃない?」

「ああ、若いコが中心になって、給湯室で騒いだりしているアレですか」

 お茶を飲もうと給湯室に向かったら、廊下まで聞こえるくらいに甲高い声で騒いでいる集団がいたのを、ぼんやりと思い出した。

「さっき嫌なこと聞いちゃって。否定したんだけどね」

 言いづらそうにしていることで、私自身のなにかだとわかった。

「小野寺さん、最近堀田課長とふたりで話し込んでいることが多いし。あと高木さんのこと」

「ああ、彼のことですか」

 噂をすればなんとやら、ちょうど彼の名前が出たタイミングで、目の前に現れた。

「小野寺ちゃん、社食のカレー美味しい?」

「普通に美味しいですよ。用がないなら去ってください」

 堀田課長の奥さんと付き合っていた高木さんに、当時の話を聞いただけで、こうしてまとわりつかれることになってしまった。

「小野寺ちゃんのそのセリフ、心が冷えていくなぁ。誰かにあたためてもらいたいかも♡」

「いい加減にしなよ、高木さん。そのせいで小野寺さんが、ほかの女子社員から、男漁りするために働いてるなんて言われてるんだよ」

(あー、いいネタを提供しているって、狙われたんだろうな。みずからの行動で墓穴を掘ることになろうとは。学くんになかなか相談する暇がないし)

「小野寺ちゃんってば、そんな酷いこと言われてるの? イケメンの彼氏がいるのに、ウチで男漁りするわけないのにさ。かわいそうに、俺が守ってやるよ」

「いいえ、その必要はありません」

 高木さんには、彼氏がいることをきちんと伝えていた。副編集長さんのアイデアを使ったというのに、どうしてこんなことになってしまったのか。

 話はさかのぼって、副編集長さんと居酒屋で飲んだとき。

「美羽ちゃんって、今の職場で男どもに言い寄られてない?」

「そんなの、誰も声をかけませんよ。私モテないですし」

「白鳥と付き合うようになってから、前よりも色っぽさに磨きがかかったように、私の目には映っているのにね。社内にいる男どもは、見る目がないんじゃない?」

 私の顔をまじまじと見つめて告げられた言葉に、なんだか照れくさくなってしまった。

「美羽ちゃん、いいこと。そのうち誰かに言い寄られる可能性があるんだから、ちゃんと彼氏がいるって言わなきゃ駄目よ」

「もちろんです。キッパリ断ります」

「ただ断るだけじゃダメ。顔面偏差値が高い白鳥を、ここぞとばかりに使わなきゃ!」

 そう言って副編集長さんはスマホを取り出し、画面をすいすい操作してから、それを私に見せる。

「この写真を美羽ちゃんにあげる。断るときにコレを見せつけて、こんなカッコいい彼氏がいるから付き合えませんって、自慢してやりなさい。男どもは絶対に打ち砕かれて、みんな揃って去っていくわよ」

 このアドバイスどおりに、私は高木さんに実行した。しかもプロの一ノ瀬さんが撮影した、最近の学くんの写真を使ったというのに――。

「小野寺ちゃんって面食いだったんだ、なんか意外かも。つーかそうやってわざわざ写メ見せるとか、どんだけ彼氏自慢したいんだよ。おもしれぇ女!」

 と言われてしまい、なぜだかこうしてつきまとわれている。ただ拒否するとそこできちんと引いてくれるので、私の反応に面白がって、からかっているような気がした。

「そうだ、渡辺さんと高木さんに聞きたいことがあって」

 それぞれの顔を見ながら訊ねると、お互い顔を見合わせる。

「堀田課長から飲みのお誘いあった?」

「あー、なんかみんなの都合のいい日を聞いてたよな」

「私も聞かれたよ、小野寺さんも聞かれたんだ?」

「う、うん、そう。みんなで飲めるのが楽しみで……」

 以前お詫びに飲みに行こうと言われたことがあったけど、みんなで飲みにというセリフがどうにも気になってしまい、本当に誘っているのかを確かめてしまった。

 実際にほかの人にも声がかかっていることがわかり、ほっと胸を撫で下ろした。
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