偽りの恋人と生贄の三日間
 キトエが張りつめた表情にわずかに困惑をにじませる。

「本気でやるから。本気出さないと、死ぬよ」

 意識を活性化させる。右手に枝葉のように赤い紋様が現れる。透ける袖の下の右腕へ、肩へ、左腕へ、脚へ、首筋へ、頬へ、広がっていく。

 キトエが声を発する前に踏みこんだ。右手の魔力を撃つ。目を見開いたキトエがとっさに腰の剣を振り抜いたのを見た。弾かれた魔力が美しいタイルの壁を砕いてえぐり取る。

 音と爆風をこらえて、剣を構えたキトエに勢いを落とさず右手の魔力をふるった。キトエの表情は驚愕のまま、魔力が剣で弾かれて風圧と爆音が続く。

 城の呪いに魔力を吸い取られているから、もうふだんの半分以下しか力が使えない。それでも魔女と疎まれた力はキトエを手負いに追いこむのには充分だ。

 殴り合いのようにキトエの目の前で魔力を撃ち出す。後退しながらキトエはぎりぎりのところで剣で弾く。一瞬遅れれば当たる。そのくらいキトエのほうが紙一重なのに、リコに当たらないように弾いている。

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