偽りの恋人と生贄の三日間

最高で最低の騎士

 薄布がかぶさるスカートの太ももを、きつく握りしめる。

「ごめんなさい。ばかなことをしたのは分かってる。こんなこと言う資格がないのも分かってる。でも、キトエと勝負して、勝ったらどうしても命令を聞いてほしかったの。わたしを主と思うなら、命令を聞いて」

 愚かだと、命令するべきではないと、分かっている。それでも。

「わたしの純潔を、奪って」

 何も、聞こえない。

 三つ取られると、向こうへ行ってしまう。

 魔力、心臓、そして、純潔。生贄として必要な三つのもの。

「わたしを生贄から解放して」

 キトエがどんな顔をしているのか、怖くて顔を上げられなかった。

「それは、できない」

 苦しそうな声だった。

 絶対に、そう言われると分かっていた。

「どうして?」

「主の責務を奪うことは許されない」

「純潔をなくして城から飛び降りても、きっと誰にも分からないのに? 飛び降りても死ぬ、飛び降りなくても殺される。ならせめて、こんな神か呪いか分からないものの生贄として死にたくない」

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