偽りの恋人と生贄の三日間
「俺もリコと同じだ。いつか、リコは知らない男のところに嫁ぐ。気が狂いそうだった。けど、一生伝えることは許されない。今、少しでも長くそばにいられるだけで幸せだって、気持ちを殺した。リコが生贄に選ばれたとき、リコを失うことに絶望した。けどそれは主の責務だ、臣下が口出しできない、主が務めを果たせるように尽くすのが自分の役目だって、自分を殺した。リコを連れて逃げたかった。全部終わったら俺も死ぬつもりだった。でもそうじゃない、本当にリコを想うなら、考えず一緒に逃げるべきだった。もっと早く伝えるべきだった」

 背にきつく回っていた腕が緩んで、とても近くにキトエの顔があった。黄緑の瞳は薄く薄く濡れて、日の虹色を返す水のように鮮やかに、きらめく。

「俺はあなたを、愛してる」

 瞳が、いっぱいの痛みを閉じこめて、細められた。

「愛してる?」

 理解が追いつかなくて、ただ繰り返していた。

「じゃあ、好きなの? わたしはキトエが好きで、キトエはわたしを愛してるの?」

「そうだよ。ずっと前から、リコを愛してる」

「うそ、でしょ?」

 言われていることは分かるのに、心がついていかない。

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