二枚目俳優と三連休
どうしよう。タクシーで部屋に帰る?でも、もし万が一それを田島に見られでもしたらさなえの部屋をつきとめられてしまう。明日から暦の上では三連休だ。田島は仕事がない分、さなえにつきまとってくるのではないか。
考えれば考えるほど、悪い展開しか思い浮かばない。
手を口に当て、考え込んでいると、そしたらやなあ、と高柳が間伸びした声を出した。
「伊藤さん、ウチに来るか。俺、引っ越したばかりで、マスコミにも知られてないねん。ダチを泊める専用の、ゲストルームがあるから、そこに泊まればええわ」
さなえは高柳の申し出にびっくりして声をあげた。
「そんな!だめです、高柳さんに迷惑をかけられません」
「もう、かけてる。俺、早く部屋に帰ってのんびりしたいねん」
「で、でも」
その次の瞬間、さなえの後方に人が来る気配があった。
「…っ!」
さなえは田島かと思い、身を縮めて振り返った。すると、会社員風の男性が、裏口を通って出て行った。
さなえは、安堵で、はーっと息をついた。
「な。とにかく、ここから離れた方がええんちゃう?」
「でも…」
知り合ったばかりの男性の部屋に泊まれ、と言われているのだ。躊躇しないわけがない。
「あのな、あんたと俺は親子ほども年が違うの。出せと言われても、手なんか出せません。
ほな、いこか」
すたすたと、高柳は自分の車に向かって歩きだした。
こ、今夜だけ…!
さなえは、そう自分に言い聞かせて、高柳の背を追った。
高柳の車に乗ると、さなえはとにかく体をかがめ、車の窓から自分が見えないようにした。しばらく車が走るのに身を任せた。高柳もとくに何も喋ろうとしない。ある程度時間が経ってから、さなえはおずおずと窓の外を見た。郊外なのか、見覚えのない風景が流れていくばかりだ。
「もうすぐやで」
高柳が言うと、前方に高級マンションが見えた。さなえの感覚では、これが億ションなのかそうでないのかもわからない。
駐車場で車を降り、明るいほうに行くと、広いロビーがあった。ソファがあり、寛げるようになっている。ソファはすぐに高級品とわかる渋い革張りのものだった。
「おかえりなさいませ」
ホテルマンが着ているような制服の女性が恭しく頭を下げてくれた。
「はい。いつもありがとさん」
高柳はすたすたとエレベーターホールに向かう。さなえは、ついて行くしかない。
考えれば考えるほど、悪い展開しか思い浮かばない。
手を口に当て、考え込んでいると、そしたらやなあ、と高柳が間伸びした声を出した。
「伊藤さん、ウチに来るか。俺、引っ越したばかりで、マスコミにも知られてないねん。ダチを泊める専用の、ゲストルームがあるから、そこに泊まればええわ」
さなえは高柳の申し出にびっくりして声をあげた。
「そんな!だめです、高柳さんに迷惑をかけられません」
「もう、かけてる。俺、早く部屋に帰ってのんびりしたいねん」
「で、でも」
その次の瞬間、さなえの後方に人が来る気配があった。
「…っ!」
さなえは田島かと思い、身を縮めて振り返った。すると、会社員風の男性が、裏口を通って出て行った。
さなえは、安堵で、はーっと息をついた。
「な。とにかく、ここから離れた方がええんちゃう?」
「でも…」
知り合ったばかりの男性の部屋に泊まれ、と言われているのだ。躊躇しないわけがない。
「あのな、あんたと俺は親子ほども年が違うの。出せと言われても、手なんか出せません。
ほな、いこか」
すたすたと、高柳は自分の車に向かって歩きだした。
こ、今夜だけ…!
さなえは、そう自分に言い聞かせて、高柳の背を追った。
高柳の車に乗ると、さなえはとにかく体をかがめ、車の窓から自分が見えないようにした。しばらく車が走るのに身を任せた。高柳もとくに何も喋ろうとしない。ある程度時間が経ってから、さなえはおずおずと窓の外を見た。郊外なのか、見覚えのない風景が流れていくばかりだ。
「もうすぐやで」
高柳が言うと、前方に高級マンションが見えた。さなえの感覚では、これが億ションなのかそうでないのかもわからない。
駐車場で車を降り、明るいほうに行くと、広いロビーがあった。ソファがあり、寛げるようになっている。ソファはすぐに高級品とわかる渋い革張りのものだった。
「おかえりなさいませ」
ホテルマンが着ているような制服の女性が恭しく頭を下げてくれた。
「はい。いつもありがとさん」
高柳はすたすたとエレベーターホールに向かう。さなえは、ついて行くしかない。