二枚目俳優と三連休
「た、たかやなぎ、さん」
 さなえは声が震えていた。怖かったせいもある。でも、確認したいことがあった。
「うん?」
「さっき…わたしのこと、おれのもん、って言った…!」
 う、と高柳の目が泳ぐ。そして、顔が赤くなった。
「あー、もうっ。オレがどんだけ君に手を出さんよう気ぃ張ってたと思ってんねん!3日間もやで、死にそうやったわ!」
「え…えと、それって…」
 さなえは、信じられない、という顔をして高柳を見つめえることしかできない。高柳はさなえをそっと自分から離し、しっかりとさなえと向き合って言った。
「伊藤さなえさん。オレは君のことが好きです。オレといたら、いろいろ面倒なこともあるかもしれへんけど、でも大事にします。オレとつきあってください」
「…はい!」
 堪えようと思ったが涙が出た。一度はふられたと思った。でも、こんなことも、人生にはあるのかもしれない。そして、高柳とだったらどんな試練も乗り越えられそうだ。
 
 コーヒーでもいれます、と高柳に言って、自分の部屋にあがってもらった。高柳はさなえが置いていった服や靴の入った紙袋も持ってきてくれていた。小さなテーブルの前に座った高柳は、もうリラックスして手足を伸ばしている。さなえはコーヒーをいれながら言った。
「高柳さんの人脈って範囲が広いんですね。東洋商事の社長さんとも親しいなんて」
「あ、あれウソ。東洋商事やったな、ってググっといて正解やったわ。田島が自分の会社を鼻にかけてるって言ってたやろ。弱点はここやな、と思って、はったりかましたった」
「は、はったりって…!」
 さなえは目を丸くした。しかし、高柳らしくもある。
 コーヒーをいれたカップをテーブルに置いて、はい、どうぞとさなえが高柳の隣に座った。
 すると、そっと高柳の手がさなえの頬に触れた。さなえの反応を見るように、ゆっくりと顔を近づけてくる。そして静かに唇が触れた。2度、3度と触れて、さなえは目が回りそうだったが、高柳にしがみついた手を離さなかった。高柳は唇を離し、ぎゅっとさなえを抱きしめた。さなえの耳元でこうささやいた。
「伊藤さん、今日、泊まってっても、ええ?」
「…!」
 新たな試練が、もうやってきた。
                                      <了>




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