二枚目俳優と三連休
「ああ…フランス語。それは初心者としては最初からハードルが高かったですね」
「そうか?」
「はい。1番発音が簡単なのがドイツ語、2番目がイタリア語なんです。1番、発音が難しいのがフランス語なんですよ。最初がフランス語だと、確かに語学が難しいイメージを持ってしまうと思います」
「せやろ?どうりでなあ。俺、そのフランス語がちょこっとトラウマになってんやろな。今回、イタリア語しゃべらなあかん、と思って結構びびってしもてな…。ああ、なんか、やっと肩の力が抜けたわ」
「よかったです。でも、イタリア語も奥が深いですよ。心して、かかってください」
さなえが微笑むと、高柳がふうん、と言った。
「えっと…何か?」
「いや、こないだ居酒屋で会った時は、あんまり喋ってなかったから…こんなんで、この人、人に教えたりできるんかな、って思ってたんやけど。思い違いやったわ。センセイは、イタリア語の話するとき、イキイキするねんな。結構、人が違ってるで。俺が最初の生徒らしいけど、太鼓判、押したる。あんた、人に教えるの、向いてるわ」
さなえは、目を、キトキトさせた。
「そうですか?わあ…うれしい、です」
気持が高揚するのがわかった。初めての講座。ドキドキしたけど、心配だったけど、なんとか、うまくいったようだった。
しかし、講座がうまくいったのは、高柳のおかげでもあった。さなえが説明の足りないところは、すぐに「それ、どういう意味?」とさっと質問してくれた。おかげで、さなえも「そうか、こういうところがわからないんだ」と対応することができた。内気で質問が苦手な生徒さんだったら、うまく回らなかったことだろう。
「高柳さんが、教えやすかった、っていうのもあります。いいところで質問してくださったので、うまくいったんだと思います」
そんな謙遜せんでも、と高柳が笑い、さなえも笑った。実は、少し心を暗くさせることがあったのだが、気持ちがほぐれ、明るい気分になった。
次回の講座の日程もすりあわせ、第一回目の講座はお開きとなった。もうすぐ夜の8時になろうとしていた。
1階まで一緒にエレベーターで降りた。高柳は地下の駐車場へ行き、車で帰るらしい。さなえはビルの正面エントランスを出て、電車で帰るつもりだった。
「ほな、な」
「はい。ありがとうございました」
「そうか?」
「はい。1番発音が簡単なのがドイツ語、2番目がイタリア語なんです。1番、発音が難しいのがフランス語なんですよ。最初がフランス語だと、確かに語学が難しいイメージを持ってしまうと思います」
「せやろ?どうりでなあ。俺、そのフランス語がちょこっとトラウマになってんやろな。今回、イタリア語しゃべらなあかん、と思って結構びびってしもてな…。ああ、なんか、やっと肩の力が抜けたわ」
「よかったです。でも、イタリア語も奥が深いですよ。心して、かかってください」
さなえが微笑むと、高柳がふうん、と言った。
「えっと…何か?」
「いや、こないだ居酒屋で会った時は、あんまり喋ってなかったから…こんなんで、この人、人に教えたりできるんかな、って思ってたんやけど。思い違いやったわ。センセイは、イタリア語の話するとき、イキイキするねんな。結構、人が違ってるで。俺が最初の生徒らしいけど、太鼓判、押したる。あんた、人に教えるの、向いてるわ」
さなえは、目を、キトキトさせた。
「そうですか?わあ…うれしい、です」
気持が高揚するのがわかった。初めての講座。ドキドキしたけど、心配だったけど、なんとか、うまくいったようだった。
しかし、講座がうまくいったのは、高柳のおかげでもあった。さなえが説明の足りないところは、すぐに「それ、どういう意味?」とさっと質問してくれた。おかげで、さなえも「そうか、こういうところがわからないんだ」と対応することができた。内気で質問が苦手な生徒さんだったら、うまく回らなかったことだろう。
「高柳さんが、教えやすかった、っていうのもあります。いいところで質問してくださったので、うまくいったんだと思います」
そんな謙遜せんでも、と高柳が笑い、さなえも笑った。実は、少し心を暗くさせることがあったのだが、気持ちがほぐれ、明るい気分になった。
次回の講座の日程もすりあわせ、第一回目の講座はお開きとなった。もうすぐ夜の8時になろうとしていた。
1階まで一緒にエレベーターで降りた。高柳は地下の駐車場へ行き、車で帰るらしい。さなえはビルの正面エントランスを出て、電車で帰るつもりだった。
「ほな、な」
「はい。ありがとうございました」